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その1 岡野康弘1万字の100分の1インタビュー





 2009年8月8日、うだるような暑さの中なんだか酷いインタビュー記事を捏造することをそっと考えていた僕は、いつもの感じでパソコンに向かった。初めてのインタビューはもちろん自分自身に行ってみよう。だって話すような相手もいないし、人の意見を聞くことって結構難しいからだ。寂しいことなんてない、きっと最後までやり遂げられるさ。一万字の100分の1を目指して、今、不毛と嘘に塗れた自己対談が始まった。






-大変失礼なんですが、まずは、岡野さんに聞きたいことなんて何も無いってところからはじめないと、と・・・。

-岡野 そうですね、僕もこのお話を聞いたときはびっくりしました。最初はマネージャーから聞いたんですけどね。とにかく最初はびっくりしたのを覚えています。その次に、びっくしていたのが段々治まっていったのを覚えています。その後のことは覚えていません。気付いたら二日たっていました。

-なるほど。

-岡野 また、知らない天井だ、っつってね。

一同 爆笑

-岡野 まあ日常的にそんなことばかりですからね、もう大して驚きはしないんです。例えば紙芝居あるじゃないですか。赤ずきんちゃんとか、桃太郎とか。ああいう、展開だとか結末だとかがわかっている物語だと、通常オーディエンスは頭の中で先回りをして自分で答えを出してしまうんですね。ああ、これはオオカミだぞとか、おばあさん鍋だぞ、とか。食べてみたいな、とか。
 そういうものを日常として捉えるとすると、僕の日常はもうすでに、一つの爆弾なわけです。十数えて目を開けたら、好きな子の家にワープしていたらどうしようとか、そういうことばかり考えているんです。言ってることわかります?どうしよう、僕はもうすでになにが言いたいのか分からなくなってきているんですけど・・・。

-とりあえず落ち着きましょう。

-岡野 そうですね。ちょっと失礼します。

 と、おもむろにトローチを舐めだす岡野氏。ここからしばらく部屋にはペチャペチャという音だけが響いた。その姿だけで詩である。
 そして数分後。


-岡野 もうトローチが手放せない(苦笑)。


インタビュー前の岡野氏、大好きな中央線を前に落ち着かない様子




-岡野 えっと・・・何の話でしたっけ?

-はい、実際はまだ何の話も出来ていないんですが。岡野さんはMrs.fictionsという団体に所属しているということですが、そのお話をお聞きしてもよろしいですか?主にどのような活動をなさっているのでしょうか?

-岡野 難しい質問ですね。

-難しいのですか?

-岡野 ・・・。

-やめましょうか。すごい冷や汗ですね。

-岡野 はい。カバみたいに、赤い汗をかくんです。

-・・・どうですか、最近は。なにか気になってるものとか、ありますか。

-岡野 気になってるもの?なんでもいいのかな?(マネージャーを気にする素振り)

-差し支えない範囲で結構です。もし、あれば。

-岡野 そうですね。しいて言えば、麻生太郎ですかね。(マネージャー小さくうなづく)

-麻生太郎というのは、自民党の。

-岡野 ごめんなさい、ノンポリなんでそういうところは詳しくないんですけど。なんですか、マニュフェスト?とかも、響きが面白いからちょっと言ってみたりする程度なんですが。麻生太郎さんですね。顔まねしてるだけで2時間3時間はあっという間ですよ。  あと今練習してるのは、ヒヨコがニワトリになる瞬間の鳴きまねです。ピヨッココ、ピヨッココ!って。これで4,5時間はあっというまですね。あとはオナ○ニーですかな。一日って大変短いですね、ご飯食べたら寝ちゃいますね。ハハっ。

-そして目が覚めたときには。

-岡野 はい、知らない天井です。


「テフロンって知ってます?あの焦げ付かないやつ」「もぐもぐ」とても美味しそうだ。




-岡野 (突然)飛ぶ前に良く見ろ、疑うより食べてみろ、ピルクルでお腹が良くなった例(ためし)がない。母の言葉です。

-背中に大きく彫ってあるという言葉ですね。

-岡野 はい。(着ていたタンクトップを胸の筋肉を膨らますことでビリビリと破いた)20歳の誕生日に彫りました。文字数が多すぎて、ちょっと下の方ぎゅうぎゅうになってるんですけど。

-すいません、達筆すぎて読めないですね。この横のはサンリオの・・・

-岡野 はい、ハンギョドンです。これは勝手に彫られました。こういう影みたいな部分も、ちゃんと背負っているんだよってことを、みんなに知ってもらえれば良いなと思っています。いつかきっと気に入っちゃうんですけどね、このハンギョドンも、ぎゅうぎゅうの文字も。

-住めば都、ですか。

 私の何気ない言葉を聴くと、岡野氏の目に光る物が見えた。涙か、ダイヤか、プラスチックか、そうでなければそれ以外の何かである。そっと拭うその姿だけで詩である。

-岡野 そろそろ辛くなってきましたね。もう朝の7時ですし。

-そうですね。ここからの会話でこの上の『あおり』みたいなの導き出すのもちょっと難しいですしね。今日は本当にありがとうございました。

-岡野 はい、こちらこそ色々な話を聞いてくださってありがとうございました。記事も楽しみにしてます。



 こうして初のインタビューは終了した。上記の記事には一切記載していないが、岡野氏が大きなアナコンダに絞められながら粛々と質問に答える様はまさに圧巻であった。ポツリポツリとまだ息があることを確認するかのように喋るその声が、徐々に小さくなって行くのを無視することは、容易ではなかった。

 白目を剥くだびに中断するインタビュー、そして「別に落ちてたわけじゃないよ」白々しく弁解する岡野氏の姿。誰もが知る、"エンターテイナー"兼"名誉ホームレス"としての岡野氏そのままであった。これからも犬・猫・トカゲを中心にファンを増やしていくであろう岡野氏から、目が離せない。





岡野康弘プロフィール
1981年晩夏生まれ。著書に「融かして熔かしてフライパン」「そのボールペンちょうだい」「冒険王ビィト」等。 エッセイストとしての顔以外にも、カーディガン収集家、コンビニ店員、ひらがな読めない人、として有名。
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